
ベクトルの内積の意味
Root / 2026. 2. 4 / 線形代数(1章, 3節)
前提知識
- スカラー × ベクトル
- ベクトルの足し算、引き算
導入
「内積」は、「スクリーンの長さ」\(\times\)「影の長さ(符号付き)」として考えることができます。
この見方が分かれば、内積の公式や性質は、すべて当たり前に見えてきます。
ベクトルは「矢印」だということを意識して、さぁ始めよう!
このページのゴール
- 「内積」=「スクリーンの長さ」\(\times\)「影の長さ(符号付き)」がわかる!
- \(90^\circ\) だと内積が 0 になることが、当たり前だと思える。
- 成分による内積の計算が、直感で理解できる。
1 – 三角関数の復習!
三角関数ってなんだっけ?って人は、ここを読もう!
ここを押して開く。
1.1 – 三角関数って何?
三角関数は、\( \cos \theta\) と \( \sin \theta\) のことです。(ここではだいぶ簡略化してお伝えします。)
xy座標上の、半径1の円上の角度に対応する座標の
- x 座標に対応するのが \( \cos \theta\)
- y 座標に対応するのが \( \sin \theta\)
図で見れば一発。

具体例を見てみましょう。

特に、以下の2つがわかっていれば、線形代数は大丈夫!
$$\begin{aligned} \cos 90^\circ &= 0 \\ \cos 0^\circ &= 1 \end{aligned}$$
1.2 – 今回の授業ではどう使う?
今回のコースでは、斜めを向いた矢印の「影の長さ(符号付き)」を計算するときに使います!
さぁ、準備は整った!レッツゴー!
2 – 内積
2.1 – 内積の意味って何?
内積とは、以下の2つの長さのかけ算です。
- 片方のベクトルを「スクリーン」に見立てたときの「スクリーンの長さ」
- もう一方のベクトルの「そこに映る影の長さ(符号付き)」
映る影の長さの符号は、スクリーンの矢印と「同じ向き」なら「プラス」、「逆向き」なら「マイナス」として扱います。
内積の「意味」
「内積」=「スクリーンの長さ」\(\times\)「影の長さ(符号付き)」
言葉の説明だと長いけど、図で見れば一発なので、図をみよう!
ベクトル \( \mathbf{a}\) と \(\mathbf{b}\) の内積を、 \(\mathbf{b}\) をスクリーンとして考えてみましょう。

この内積を、\( \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} \) と表します。(中の「 \(\cdot\) 」は省略できません!)
三角関数を使うと、影の長さ(符号付き)を \( |\mathbf{a}| \cos \theta \) と表すことができます。( \( \theta \) は2つの矢印の開いている角度のこと。)

これにスクリーンの長さをかけて、
$$\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = |\mathbf{a}| |\mathbf{b}| \cos \theta $$
と内積を表現することができます。
ここで注意して欲しいことは、内積は「2つのベクトルの計算」と「結果はスカラー」です。めっちゃ大事。
2.2 – 式変形のやり方
内積の計算では、以下の3つの式変形ができます。
$$ \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = \mathbf{b} \cdot \mathbf{a} $$
- 意味:どっちのベクトルをスクリーンにしても内積の値は変わらないということ!
- 証明:三角関数の式から確認ができます。
$$ \mathbf{a} \cdot (\mathbf{b} + \mathbf{c}) = \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} + \mathbf{a} \cdot \mathbf{c} $$
$$ \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b}) = k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}) $$
- 意味:スクリーンに対する「ベクトルの影の合計」と「ベクトルの合計の影」は同じということ!
- イメージ:内積の定義を使って、「矢印」で幾何的に確認することができます。
(下の図は、\( \mathbf{a} \cdot (\mathbf{b} + \mathbf{c}) = \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} + \mathbf{a} \cdot \mathbf{c}\) を「矢印」で説明したものです
練習として、\( \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b}) = k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b})\) は、自分で説明してみてください!)

内積の式変形は、最初は難しいと思いますが、使っていく上で慣れていくので大丈夫!
注意点は以下の2点です。
- \(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}\) の「\( \cdot\)」 を抜かしてはいけない。(\(\mathbf{a} \mathbf{b}\)と内積を表記してはいけない。)
- 2つのベクトルの間の計算であること(\( \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} \cdot \mathbf{c} \)というのはできない。)
3 – 内積の性質
内積には重要な2つの性質があります。
- 内積は、2つのベクトルが直角の時、値が0になる。
- \(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = 0\)
- 同じベクトル同士の内積は、そのベクトルの長さの2乗になる。
- \( \mathbf{a} \cdot \mathbf{a} = |\mathbf{a}|^2 \)
図で考えれば、当たり前ですね!

ちなみに、三角関数の式からも確認することができます。
直角の場合 ( \(\theta = 90^\circ\)): $$ \begin{align*} \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} &= |\mathbf{a}| |\mathbf{b}| \cos 90^\circ \\ &= |\mathbf{a}| |\mathbf{b}| \cdot 0 \\ &= 0 \end{align*} $$
同じベクトルの場合 ( \(\theta = 0^\circ\)): $$ \begin{align*} \mathbf{a} \cdot \mathbf{a} &= |\mathbf{a}| |\mathbf{a}| \cos 0^\circ \\ &= |\mathbf{a}|^2 \cdot 1 \\ &= |\mathbf{a}|^2 \end{align*} $$
4 – 成分だとどうなる?
4.1 – ベクトルの成分の意味を復習
ベクトルは成分で表すことができました。
$$\mathbf{a} = \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \end{pmatrix}$$
実は、それぞれの座標軸の1目盛り分のベクトルを\( \mathbf{e}_1, \mathbf{e}_2 \)とすると、
$$ \mathbf{a} = a_1 \mathbf{e}_1 + a_2 \mathbf{e}_2 $$
となります。
図を見れば簡単!

4.2 – 成分での内積
成分での内積を求めるために、以下のことをまずチェックしましょう。
- \( \mathbf{e}_1 \cdot \mathbf{e}_2 = \mathbf{e}_2 \cdot \mathbf{e}_1 = 0\)(直交するので、内積は0)
- \( \mathbf{e}_1 \cdot \mathbf{e}_1 = \mathbf{e}_2 \cdot \mathbf{e}_2 = 1 \)(長さの2乗)
図で確認してみましょう。

先ほどの\( \mathbf{a} = a_1 \mathbf{e}_1 + a_2 \mathbf{e}_2 \)を使って、ベクトルの内積を成分で計算してみましょう。
$$\mathbf{a} = \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \end{pmatrix}, \quad \mathbf{b} = \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \end{pmatrix}$$
この時、2つのベクトルの内積は以下の通りに計算できます。(ここは何となく読む大丈夫!)

直角な組(①と④、②と③)の内積は 0 になります。
そのため、\(\mathbf{a}\cdot \mathbf{b}\) は、「①と③の内積」+「②と④の内積」となります。
内積の式変形と、さっきの\(\mathbf{e}_1 , \mathbf{e}_2\)の内積を使うと、
$$a_1 \mathbf{e}_1 \cdot b_1 \mathbf{e}_1 = a_1 b_1 (\mathbf{e}_1 \cdot \mathbf{e}_1) = a_1 b_1\\ a_2 \mathbf{e}_2 \cdot b_2 \mathbf{e}_2 = a_2 b_2 (\mathbf{e}_2 \cdot \mathbf{e}_2) = a_2 b_2$$
以上から、内積は成分によって、
$$\mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2$$
と表すことができます。(これはしっかり覚える!)
「2つのベクトルの成分の、同じ位置同士をかけたものの和」\(=\) 「内積」になるんですね。
5 – 内積まとめ
内積の「意味」
「内積」=「スクリーンの長さ」\(\times\)「影の長さ(符号付き)」
$$ \begin{aligned} \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} &= |\mathbf{a}| |\mathbf{b}| \cos \theta
\\ &= a_1 b_1 + a_2 b_2 \end{aligned} $$
ここまで2次元のベクトルで考えてきました。
これらの考え方は、ベクトルの次元が上がっても全く同様です。
実践的には、成分の計算によって内積を求めるのが主ですが、「矢印」のイメージも覚えておいてあげてください。
できる式変形は以下の通りです。
$$\begin{align*} \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} &= \mathbf{b} \cdot \mathbf{a} \\ \mathbf{a} \cdot (\mathbf{b} + \mathbf{c}) &= \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} + \mathbf{a} \cdot \mathbf{c} \\ \mathbf{a} \cdot (k\mathbf{b}) &= k(\mathbf{a} \cdot \mathbf{b}) \end{align*} $$
ここで一度、ベクトルを用いた計算の結果がどうなるかを整理しておきましょう。
- スカラー × ベクトル:ベクトル
- ベクトル + ベクトル:ベクトル
- でも内積は、「スカラー」(ただの数)
混同しないように!
6 – どういう時に使うの?
内積は、2つのベクトルが垂直に交わっているかどうかを確認する時に利用します。
具体例を見てみましょう。
$$ \mathbf{a} = \begin{pmatrix} 5 \\ 6 \\ 3 \end{pmatrix} \quad \mathbf{b} = \begin{pmatrix} -3 \\ 1 \\ 3 \end{pmatrix} $$
この時、成分によってこの2つのベクトルの内積を計算すると、
$$\begin{aligned} \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} &= 5 \times (-3) + 6 \times 1 + 3 \times 3 \\ &= -15 + 6 + 9 \\ &= 0 \end{aligned}$$
よって、この2つのベクトルが垂直になっていることがわかります。

2つのベクトルが直交してるかよくわからない時も、内積を求めることで、直交してることがわかる!
理解チェック
要点
内積とは、「スクリーンの長さ」と、「映る影の長さ(符号付き)」の積!
式だと、
$$\begin{aligned} \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} &= |\mathbf{a}| |\mathbf{b}| \cos \theta \\ &= a_1 b_1 + a_2 b_2 \end{aligned}$$
- 直角だと:0
- 同じベクトル同士だと:そのベクトルの長さの2乗
何度も言いますが、内積は「スカラー」です。重要!
Mini Quiz
お疲れ様
お疲れ様でした!
これで、基本的なベクトルの計算は完璧ですね!
内積は、この先、線形代数で何度も登場します。お楽しみに!
内積の「計算練習したい!」、「もっといろんな使い方を知りたい!」って人は練習問題をチェック! >>練習問題(作成中)
次回は、ついに線形代数の重要キャラクター、「行列」の登場です。
でも、今までのベクトルの「矢印」のイメージができていれば、自然に理解できます!
「わかりやすかった!」「内積簡単すぎ!」と思った方は、ぜひコメントで教えてください!
また、「もっとこうしてほしい」という改善案も大歓迎です。
私も皆さんと同じ学習者の一人です。共に学んでいきましょう!
誤植やバグを見つけた場合も、コメントやコンタクトフォームからご連絡いただけると嬉しいです。
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